見せかけの利益にしない!会社にお金が残る考え方

「決算は黒字。でも、通帳の残高はどんどん減っている気がする」「利益が出ているはずなのに、資金繰りはいつもギリギリ」——このような声は、経営の現場で決して珍しいものではありません。特に組織が小規模であるほど、日々の現金の動きに対して敏感でありながら、なぜ資金が減っていくのか、その構造を理解するのが難しい場面も多く見受けられます。

実は、会計上の「利益」と、実際に手元に残る「現金(キャッシュ)」はイコールではありません。そして、この違いを理解せずに経営判断をしてしまうと、いくら黒字を出していても、会社にお金が残らず、最悪の場合には「黒字倒産」に陥るリスクさえあります。

本記事では、「利益が出ているのにお金がない」状態を脱却し、実際にお金が残る経営へとシフトするための考え方と実践方法を、会計の視点から丁寧に解説していきます。小規模な会社にこそ必要な「お金を守る経営力」を育てる第一歩として、ぜひご活用ください。


目次

利益が出ているのにお金がない理由とは?キャッシュと利益の違いを知る

「利益が出ているのに、なぜお金が残らないのか?」。この問いに明確に答えられる経営者は意外と多くありません。答えはシンプルです。「会計上の利益」と「現金の増減」は、構造的に異なる仕組みで成り立っているためです。

利益と現金は一致しない:経営初心者がつまずく落とし穴

「利益=現金」ではありません。会計の世界では、発生主義という考え方が用いられています。これは、「取引が発生したタイミングで収益や費用を計上する」もので、実際に現金が動いたかどうかは関係ありません。

たとえば、売上を100万円計上しても、その入金が3カ月後であれば、利益は発生していても現金は手元に入っていません。逆に、設備投資などで支払った資金が「固定資産」として計上される場合、現金支出があっても費用にはならず、利益には影響しないこともあります。

このように、損益計算書で「黒字」であっても、現金が増えていない可能性があるのです。経営においては、この「利益とキャッシュのズレ」をしっかり認識することが不可欠です。

では、なぜこのようなズレが資金繰りの悪化につながるのでしょうか?次で詳しく見ていきましょう。


黒字倒産の仕組みを理解しよう

黒字倒産とは、会計上の利益は確保できているにもかかわらず、資金繰りが行き詰まり、会社が倒産する状態を指します。これは「利益が出ているのだから安心」と考えてしまう経営の盲点です。

この倒産パターンは、特に売掛金の回収遅れや、過大な設備投資、借入金返済負担の増大などにより、キャッシュアウト(支出)がキャッシュイン(収入)を上回ってしまうことで発生します。

例えば、期末に多くの受注を取り、売上が一気に伸びたとします。しかし、その多くが掛け取引で、実際の入金は数カ月後。にもかかわらず、仕入れや人件費、家賃、税金などの支払いはすぐに発生します。このような場合、損益計算書上では黒字なのに、現金が足りずに資金ショートを起こしてしまうのです。

黒字倒産を防ぐには、「利益」だけでなく、お金の流れ=キャッシュフローの把握と管理が不可欠です。


キャッシュを重視する「経営思考」が必要な理由

お金が残らない経営から脱却するには、経営判断の軸を「利益」から「キャッシュ」に切り替える必要があります。これは単に経理や会計の知識の問題ではなく、会社を存続・成長させるための戦略的な思考法です。

売上を伸ばすことや経費を削減することはもちろん重要ですが、それ以上に問われるのは、「その結果、会社に現金がどれだけ残るのか?」という視点です。この視点が欠けると、営業面で成功していても、資金面では常に綱渡りのような経営を強いられることになります。

例えば、今後の成長に備えて設備投資を検討している場合、その費用が一括で発生するのか、分割で支払うのか、補助金や助成金は活用できて実質の資金負担はどれぐらいか、といった点をキャッシュフローの視点で精査することが必要です。

「利益が出れば安心」ではなく、「キャッシュが残れば安心」という発想に切り替えることで、経営に対するコントロール力は格段に高まります。そして次に必要なのは、そのキャッシュフローをどう「見える化」するか、というステップです。

お金が残る経営の鍵は「キャッシュフローの見える化」にある


このセクションでは、「利益が出ているのにお金が残らない」状態から脱却するための具体的な対策として、キャッシュフローの「見える化」の重要性とその手法について解説していきます。数字が苦手でも、実務に落とし込めるよう丁寧に解説します。


キャッシュフロー計算書を理解し、日常業務に活かす

キャッシュフロー経営の第一歩は「キャッシュフロー計算書(C/F)」を理解し、自社の資金の動きを把握することです。これは決して上場企業だけの話ではなく、小規模企業にこそ必要な経営ツールです。

キャッシュフロー計算書とは、ある期間内に「会社のお金がどこから入って、どこへ出ていったのか」を【営業活動】【投資活動】【財務活動】の3つに分けて示す表です。これにより、利益の大小に関係なく、資金繰りの実態が把握できるようになります。

たとえば、営業活動によるキャッシュフローがプラスであれば、本業が(資金的に)健全に機能している証拠です。一方、マイナスであれば、本業で稼げていないことを意味します。利益が出ているのに営業キャッシュがマイナスであれば、売掛金の回収遅れや在庫の滞留が疑われます。

このように、キャッシュフロー計算書は、経営判断の「レントゲン」のような役割を果たします。月次で簡易版を作成するだけでも、経営の見通しが格段に変わります。

「そんなこと言われても難しそう…」と感じるかもしれませんが、最近はクラウド会計ソフトでも簡易的なキャッシュフロー計算書を自動で出力できるものが増えています。会計のプロでなくても活用できる環境は整いつつあるのです。


在庫・売掛・支払条件の管理で資金繰りが改善する

キャッシュフローの悪化要因として見落とされがちなのが、運転資金に関わる「在庫」「売掛金」「買掛金」の管理です。この3つは、企業活動における資金の出入りに大きく影響します。

まず在庫。売れ残っている商品や、仕入れたまま動いていない材料は、現金を寝かせている状態です。在庫が増えると帳簿上の資産は増えますが、実際の現金は減っていきます。

次に売掛金。売上が計上されても、実際の入金は1~2カ月後というケースはよくあります。ここで問題なのは、「売上=お金が入った」と誤認してしまい、先に支出をしてしまうこと。これがキャッシュ不足の一因になります。

また、買掛金や支払条件の見直しも大切です。仕入先との交渉によっては、支払いサイトを延ばすことが可能な場合もあります。支払いを遅らせ、回収を早めることができれば、資金繰りは大きく改善します。

つまり、運転資金の3要素を見直すことで、資金を「社内に滞留させず、回転させる」ことが可能になり、キャッシュが残りやすくなるのです。


税金対策とキャッシュ管理は分けて考えるべき

会社の利益が増えてくると、「節税対策」を意識し始める方も多いでしょう。もちろん節税は大切です。しかし、節税とキャッシュ管理は全く別の話であり、混同してはいけません。

たとえば、決算期に「税金を減らすために」と高額な備品を購入したとします。この支出によって利益は減るかもしれませんが、もちろん現金も同時に減ってしまうことを忘れてはいけません。結果として、翌月の資金繰りが一気に苦しくなるという事態も起こり得ます。

また、生命保険や中小企業倒産防止共済など、いわゆる「節税商品」もありますが、これらは中長期的なキャッシュフローを考慮して選ぶ必要があります。一時的な節税メリットだけで判断すると、資金繰りを圧迫する可能性があります。

さらに、法人税や消費税の支払いも「利益が出てから2カ月後」など、タイムラグがあります。この期間に資金繰り対策を怠ると、納税時にキャッシュショートするリスクが高まります。

節税の目的は「お金を残すこと」ですが、実際にお金を残すには、キャッシュの動きを理解し、それに応じた支出や投資を計画的に行うことが不可欠です。

税金対策を行う際は、税理士や会計士と相談しながら、短期・中期のキャッシュフローシミュレーションをしっかり行いましょう。


お金を「見える化」する仕組みを持つことで、経営の安心感は格段に高まります。
次に大切なのは、こうした知識をベースに、日々の業務でどうキャッシュを守り増やしていくかという「実践的なアクション」です。

すぐに始められる「お金が残る会社」に変える実践アクション

キャッシュフローの重要性を理解しても、実際の業務に落とし込まなければ意味がありません。経営者が自ら動き、仕組みを整えることが「お金が残る会社」への第一歩です。ここでは、今日からでも始められる具体的な実践アクションを紹介します。


シンプルな資金繰り表を自社で作ってみる

「資金繰り表」は経営者が最も見るべき財務資料の一つです。
資金繰り表とは、月ごとの現金の収入と支出を一覧にし、「いつ・いくらのお金が出入りするのか」を明らかにするものです。利益ではなく、実際の現金の動きに焦点を当てることで、資金ショートの予兆をいち早く察知できます。

たとえば、毎月の売上、回収予定、支払予定、家賃や人件費などの固定費を記載し、各月の残高を算出するだけでも、未来の資金繰りが明確になります。特に納税月や賞与月など、支出が集中する時期を事前に把握しておくことで、計画的に資金を準備することができます。

ExcelやGoogleスプレッドシートでも十分対応可能です。
また、クラウド型の会計ソフトや資金繰り管理ツールを使えば、自動でデータを連携し、よりリアルタイムに近い形での管理も可能になります。

重要なのは、「正確に作ること」よりも「定期的に見直すこと」です。月に一度でも資金繰り表をチェックする習慣があれば、経営の見通しは格段に良くなります。


経費の優先順位を見直し、キャッシュの出血を止める

資金繰りを改善するためには、無駄な支出を減らし、重要な支出に集中させる判断力が欠かせません。利益はあっても、出ていくお金が多すぎれば、手元にキャッシュは残りません。

まずは、毎月の経費をカテゴリごとに分けて洗い出しましょう。
たとえば、以下のような分類が考えられます。

  • 絶対に必要な固定費(例:家賃、光熱費、人件費など)
  • 売上に直結する投資(例:広告費、営業活動費)
  • 効果が見えづらい支出(例:過剰な接待交際費、使いきれていないサブスクツール)

ここで重要なのは、「何にお金を使っているのか」ではなく、「その支出が今の経営に必要かどうか」を問い直すことです。使っていないツールのサブスクリプション費用が毎月1万円かかっていれば、年間で12万円。これを3件見直すだけで、36万円のキャッシュが浮きます。

また、利益が出たからといって、ボーナス的に一気に使ってしまうのも避けたいところです。支出には優先順位をつけ、「使うお金」と「守るお金」を分けることが、お金を残す会社へと変わる鍵となります。


経営者自身が数字に強くなるための3つの習慣

お金が残る会社をつくるうえで、最も重要なのは経営者自身の姿勢です。会計や財務は専門家に任せるもの、という考え方では、いつまでも経営のコントロールを他人に委ねることになります。
経営者自身が数字を「読める」「使える」ようになることが、キャッシュフロー経営の基盤です。

そのための具体的な習慣を3つ紹介します。

  1. 日次のキャッシュ残高を確認する
     毎日の通帳残高や現金残高をチェックする習慣を持つことで、資金の変動に対する感度が高まります。数字に触れることが第一歩です。
  2. 週次で簡単な資金の流れを振り返る
     週に一度、「今週の入金」「今週の支出」を振り返り、次週の予測を立ててみましょう。現金収支に意識を向ける習慣が、資金繰りの予測力を育てます。
  3. 月次で会計データを確認し、意思決定に活かす
     月末には損益計算書や資金繰り表を見ながら、「今月は何にお金を使ったか」「どれだけ残ったか」を確認し、翌月の行動につなげましょう。

これらは特別なスキルを必要としません。習慣化することで、自然と経営者の「数字に対する目」が養われ、財務体質の改善に繋がります。


見かけの利益ではなく、手元に「現金」を残す経営が会社の未来を守る

「黒字=健全経営」とは限りません。利益は帳簿上の数字であり、実際に会社を動かすのは「現金」です。売上が増えても、利益が出ても、手元に現金がなければ企業は存続できません。

本当に大切なのは、キャッシュフローの視点から経営判断を行うことです。そして、その実践のためには、資金の流れを「見える化」し、無駄な支出を見直し、必要な支出に集中させる力を養うことが求められます。

また、経営者自身が数字を読む習慣を身につけることで、財務のブレを早期に察知し、トラブルを未然に防ぐことが可能になります。これは、組織が小さい企業ほど「経営者の感覚」と「数字の現実」を一致させることが、経営の安定に直結するためです。

会社にお金を残す経営は、大企業だけでなく、
小さな会社でも正しい考え方と習慣によって「キャッシュに強い会社」へと変わることは十分に可能です。

もしも、自社のバックオフィス業務が煩雑で、数字の把握に時間が取れないという課題を抱えているのであれば、記帳代行・給与計算・請求管理などの業務を外部に委託することも、キャッシュフロー改善の有効な選択肢です。
さらに、COO代行のように、戦略面まで支援するサービスを活用することで、経営の「見える化」と「安定化」はより確実なものになります。

経営を「利益」から「キャッシュ」にシフトさせること。
それが、会社の未来を守る最大のリスク対策であり、真の意味でお金が残る経営への第一歩です。

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